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⑤魚屋なのに市場仕入れを一切せず、
全ての魚を漁師さんから仕入れる理由

魚屋なのに市場仕入れを一切せず、全ての魚を漁師さんから仕入れる理由

「魚屋さんやったら、市場に仕入れに行くんですよね?」漁師から魚を直接受け取っている写真。市場を介さない直接仕入れの様子が伝わる構図よく聞かれます。
確かに、魚屋といえば市場。
特に僕たちが店を構えているのは、海から離れた京都府南部です。
普通に考えれば、全国から魚が集まってくる中央卸売市場へ行って、そこから魚を仕入れる。
それが一番自然なやり方だと思います。
実際、市場には全国から本当にたくさんの魚が集まってきます。
でも、僕たちは市場から魚を仕入れていません。すべての魚を、漁師さんから直接仕入れています。

なぜ、そこまでしているのか。
理由はいくつもあります。
でも、一番大きな理由は、「誰が、どこで、どうやって獲って、どう締めた魚なのか。それが全部わかるから。」これなんです。

市場では分からないことがある

市場には、たくさんの魚があります。多くの魚が並ぶ市場の競り場の写真。産地や処理状況が見えにくい流通の様子を連想させるもの
でも、その魚が
「誰が獲ったのか?」
「どこの海で獲れたのか?」
「獲れてから何日経っているのか?」
「獲ったあと、どういう処理をされたのか?」
すべてを確実に把握するのは難しい。

もちろん、市場には市場の役割があります。
全国から魚を集めて、必要な場所へ流通させる。
これは、日本の魚食文化を支えている大切な仕組みです。
でも僕がやりたい魚屋は、そこではなかった。
僕は、「血抜き、神経締めをした天然魚だけで魚屋をやる」と決めています。
そうなると、一般的な流通に乗っている魚の中から、自分が求める魚を毎日のように安定して探すのは、どうしても難しい。
だから、だったら、自分で漁師さんとつながるしかない。
そう思ったんです。

さかなやひろさんの魚は「○○県産」ではありません

僕たちの魚を説明するとき、漁師の名前や漁場が分かるようなラベル・木箱に入った魚の写真
「鹿児島県産です」
「北海道産です」
とは、あまり言いたくないんです。
もちろん産地は大切です。
でも、僕たちにとって大切なのは、その先。

例えば、「鹿児島県の○○さんが、○○の海で獲って、こういう処理をして送ってくれた魚です」というところまで分かること。
北海道の魚なら、「北海道の○○さんが獲って、神経締めして送ってくれた魚です」と話せる。
僕たちのところに来る魚は、「北海道産」「鹿児島県産」という産地名だけでは終わらないんです。一匹の魚の後ろに、漁師さんの顔が見える。
僕にとって、これはものすごく大きなことです。

漁師さんに会いに行きます

僕は、魚だけを送ってもらって終わりにはしたくありません。店主が漁師の船に同乗し、漁の様子を見学している写真
実際に漁師さんのところへ行って、船に乗せてもらって、漁に同行することもあります。

一緒に海へ出て、
「いつもこの海から魚を届けてもらってるんやなぁ!」
「船に乗って漁が始まった瞬間に目つきが変わる漁師さんの熱気」
「光り輝く躍動感にあふれた魚たち」
「獲れた魚の扱い方」
現場を実体感することで心の奥底の情熱を再認識できるんです。
漁が終わったあとに、一緒にお酒を飲みながら話すこともあります。
魚の話だけじゃありません。
仕事の話をしたり、海の話をしたり、くだらない話で笑ったり。
そういう時間が、僕はすごく好きで大切だと思っています。

「もっと良くするにはどうすればいい?」

僕が一番大事にしているのは、ここかもしれません。店主と漁師が魚を前に話し合っている写真。改善を重ねるやりとりが伝わるもの
漁師さんに、「神経締めしてください」と言って終わりではないんです。
僕自身も魚屋として、「もっと良くするにはどうすればいい?」をずっと考えています。
毎日のように全国の漁師さんと電話でいろんな課題について話します。
そして漁師さんも考えてくれる。
僕も考える。
一度試してみる。
やってみて、良かったら続ける。
駄目だったら、また考える。
そうやって少しずつ積み重ねてきた関係があります。

だから、僕たちの魚は単純に
「漁師さんから仕入れています」
というだけではないんです。漁師さんと一緒に、魚をもっと美味しくすることに挑戦している。
僕は、そう思っています。

「ひろさんのためなら」

こうやって長くやりとりを続けていると、少しずつ信頼関係ができてきます。珍しい魚や小ぶりな魚が丁寧に梱包されて届いた写真
魚がたくさん獲れるときだけではありません。
むしろ、魚が少ないときにこそ、その関係が分かります。
普通なら、わざわざ手当てをしてまで出荷しないような小さな魚。
滅多に獲れない珍しい魚。

そんな魚を、「ひろさんのところに送ろう」と、わざわざ手をかけて送ってくれます。
近くに行くからと直接持ってきてくれる漁師さんもいます。
これって、単純に魚を仕入れているだけでは生まれないことだと思うんです。
「売れるから送る」
だけじゃない。「ひろさんのお客さんに食べてもらいたい」そんな気持ちがあって、魚が届く。
僕は、そこにものすごく価値を感じています。

僕が思う、魚屋の仕事

魚を扱っていると、ついつい漁師から届いた魚を店主が受け取り、状態を確認している写真
「どの魚が美味しいか」
「どの魚が利益をとれるか」
「売りやすい魚は?」
という話になりがちです。
もちろん、それも大事です。

でも、僕が魚屋をやってきて思うのは、結局、魚も人が運んでくるものだということ。
漁師さんが海に出る。
魚を獲る。
魚の状態を見て、血を抜く。
神経を締める。
大切に扱って送ってくれる。
僕がそれを受け取って、さらに魚の状態を見て、どうすれば美味しく食べてもらえるかを考える。
そして、お客さまの食卓へ届ける。
こうやって考えると、魚のやりとりに見えて、
実は最初から最後まで、「人と人」なんです。

だから、僕は市場ではなく漁師さんと向き合う

市場仕入れをしないのは、市場が悪いからではありません。店頭に並ぶ魚と、その奥で作業する店主の写真。魚と人のつながりが伝わる構図
僕がやりたい魚屋には、漁師さんの顔が見える仕入れが必要だった。
ただ、それだけです。
誰が獲ったのか。
どこの海で獲ったのか。
どうやって締めたのか。
その魚が僕の店に届くまでに、どんな人が関わっているのか。
そこまで全部見える魚を扱う。
そして、漁師さんと一緒に「もっと美味しくできないか?」と考え続ける。
こんなことを、ここまで徹底してやっている魚屋を、僕は見たことも聞いたこともありません。

だから僕は、自信を持って言えます。「さかなやひろさんは、唯一無二の魚屋です。」珍しい魚を売っているからではありません。
高級な魚を売っているからでもありません。魚を通して、人と人の情熱まで届ける。
それを本気でやっているからです。
今日もさかなやひろさんに届く魚たち。
その魚の向こうには、海があって、船があって、漁師さんがいる。
そして、その魚を「最高の状態でお客さまに届ける」と思っている僕がいる。
僕は、そんな魚屋であり続けます!


そして次回は、いよいよ魚が届いた「その先」の話。届いた魚を、僕たちはどうやって美味しく仕上げているのか。
ここからが、魚屋の腕の見せどころです。

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