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④さかなやひろさんでは、なぜ天然魚しか扱わないのか?

「天然魚と養殖魚、どっちが美味しいんですか?」

魚屋をやっていると、よく聞かれる質問です。
天然魚と養殖魚の切り身を並べて置いている写真。見た目や色味の違いが伝わる構図正直に言います。
僕は、養殖魚が美味しくないとは思っていません。
むしろ、養殖という技術はすごいと思っています。
天然魚の漁獲量が減っている中で、安定して魚を供給できる。
昔に比べれば、餌や飼育環境の研究もずいぶん進んでいます。

魚種によっては、
「天然魚より養殖魚のほうが脂が乗っていて美味しい」
という人がいるのも、よく分かります。
では、そんな養殖魚がある中で、なぜ僕は天然魚しか扱わないのか?

理由を一言で言うなら、
「面白いから。」
なんです。

養殖魚は、人が作り上げた美味しさ

管理された生け簀で養殖魚が育てられている写真。安定した環境で育つ様子が伝わるもの養殖魚の大きな魅力は、安定していることです。

  • 餌を管理する。
  • 飼育環境を管理する。
  • 成長を管理する。

そうやって人が研究を重ね、より良い魚を作り上げていく。
だから、同じ魚種なら大きさや脂の乗り、身質などもある程度揃っています。
いつ買っても、いつ食べても、一定の品質が期待できる。
これは養殖魚の大きな価値です。
僕は、それを否定するつもりはありません。
むしろ、安定した品質の魚を届けるという意味では、養殖には養殖の素晴らしさがあると思っています。
ただ、僕が魚屋として惹かれるのは、その反対側にある魚なんです。

天然魚は、自然が作り上げたもの

天然魚は、一匹として同じではありません。
大きさや脂の乗りが異なる天然魚が並んでいる写真。一匹ごとの個体差が分かる構図ものすごく脂が乗っている魚もいれば、少し痩せた魚もいる。
大きさも違えば、身の締まり方も違う。
同じ魚種でも、獲れた時期や場所、その魚が何を食べてきたかによって、状態は変わります。

人が決めた環境で育った魚ではなく、広い海の中で、その魚自身が生きてきた結果が一匹の魚に表れている。
だから、天然魚には「この魚ならこうすればいい」という決まった答えがありません。
そこが、僕にはたまらなく面白いんです。

一匹の魚と向き合い、「どうすれば美味しい?」を考える

天然魚を扱っていると、魚が届くたびに考えます。
店主が一匹の魚を手に取り、状態を見極めている写真。魚と向き合う仕事ぶりが伝わるもの「この魚、どうやって食べてもらうのが一番いいだろう?」

  • 脂がしっかり乗っているなら、刺身でいくか。
  • 身質がしっかりしているなら、少し寝かせてみるか。
  • 炙ったらもっと良くなるか。
  • 火を入れたほうが旨みが出るか。

同じ魚種でも、状態が違えば答えも変わります。
だから僕は、魚を単純に「魚種」だけで見ません。

目の前にある、この一匹を見る。
そして、
「この魚の良さをどう引き出して、お客さまに一番美味しく食べてもらうか」
を考える。
これが、僕にとって魚屋をやる楽しさの一つなんです。

そして、天然魚には「出会い」がある

もう一つ、天然魚ならではの大きな魅力があります。
漁師から届いた箱を開けた際の、見慣れない魚を含む水揚げの写真それは、知らない魚に出会えること。
海は広いです。

僕たちが普段魚屋で目にする魚なんて、海にいる魚のほんの一部。
漁師さんから魚が届いて箱を開けたら、
「なんや、この魚!?」
となることもあります。
僕自身、魚屋で毎日魚を触っていますが、それでも初めて見る魚、初めて触る魚があります。
「こんな魚がいるんや!」
「これ、どうやって食べたら美味しいんやろ?」
そんなところから始まる。
これが、めちゃくちゃ楽しい。

その「初めて」は、お客さまにとっても価値になる

僕が面白いと思っていることは、お客さまにとっても価値があると思っています。
お客様が珍しい魚を手に取り、驚いている様子の写真今まで見たことも、食べたこともない魚を買ってみる。
食べてみたら、
「えっ、これ美味しい!」となる。
その瞬間って、ただ魚を食べただけではないと思うんです。
「知らなかったものを知った」
という体験です。

毎日の食卓には、いつもの魚があっていい。
でも、たまには知らない魚に出会ってみる。
「水族館でしか見たことない!」
「こんな味の魚があるんや!」
という初体験の発見がある。
そんな体験を提供できるのも、さかなやひろさんにしか出来ない役割だと思っています。

僕が天然魚に感じる「余韻」

もう一つ、これは長年魚を食べ、扱ってきた僕自身の感覚ですが、
天然魚には独特の余韻があると感じています。天然魚の刺身を箸でつまみ上げている写真。身の質感が伝わる寄りの構図養殖魚は、脂がしっかり乗っていて、食べた瞬間に「美味しい」と感じる魚が多い。
一方で僕が天然魚に感じるのは、脂の量だけではない旨みです。

  • 噛んでいるときの味。
  • 飲み込んだ後に残る味。
  • そして、もう一口食べたくなるような余韻。

僕は、そこに天然魚の魅力を感じています。
もちろん、これは魚種や個体によっても変わります。
だからこそ、一概には言えない。
それが天然魚なんです。

「安定している魚」と「いつ獲れるか分からない魚」

養殖魚は、必要なときに安定して手に入る。
その日によって内容が変わる天然魚の陳列写真。魚種や量が日々異なる様子が伝わるものこれは、とても大切なことです。
一方、天然魚はそうはいきません。
海の状況や季節によって、獲れる魚が変わる。
昨日あった魚が、今日はないかもしれない。
逆に、昨日まで知らなかった魚が突然届くこともある。
僕は、その不安定さも含めて天然魚が好きなんです。
いつ行っても同じものがある安心感ではなく、
「今日は何に出会えるんだろう?」
という楽しみがある。

天然魚だから、必ず美味しいわけではない

ここは、はっきり言っておきたいです。
店主が魚の脂の乗りや身質を確認している写真。魚を見極める様子が伝わるもの天然魚だから、養殖魚より必ず美味しいわけではありません。
天然魚にも脂の少ない魚はいます。
身質が良くない魚に出会うこともあります。
だからこそ、魚を見る目が必要になる。

そして、その魚に合わせて、どう扱うかを考える。
寝かせたほうが良いか?寝かさないほうが良いか?
少し塩をあてて脱水するか?
刺身がいいのか、焼いたほうがいいのか?
一匹一匹違うからこそ、僕たち魚屋の仕事があります。

だから、僕は天然魚を選びます

「天然魚のほうが高級だから」様々な天然魚が並ぶ店内の写真。豊かな品揃えと魚屋としてのこだわりが伝わるものという理由ではありません。
「養殖魚より美味しいから」という単純な理由でもありません。
僕が天然魚を選ぶ一番の理由は、
一匹一匹違う魚と向き合うことが、面白いから。

自然が作った魚には、決まった答えがありません。
脂の乗りも、身質も、大きさも違う。
知らない魚に出会うこともある。
その一匹を見て、
「どうすれば、もっと美味しく食べてもらえるだろう?」
と考える。

そして、お客さまが食べて、
「こんな魚、初めて食べたけど美味しい!」
と言ってくれる。
僕にとって、それが魚屋をやっている大きな楽しみです。
天然魚だから価値があるのではなく、天然魚だからこそ生まれる「個性」と「出会い」に価値がある。
それが、さかなやひろさんが天然魚だけを扱う理由です。


そして次回は、僕たちの仕入れについてのお話です。
「魚屋なのに市場仕入れを一切せず、全ての魚を漁師さんから仕入れる理由」

なぜ普通の魚屋のように市場へ行って魚を仕入れないのか。
なぜ、漁師さんから直接仕入れるのか。

そこにも、僕たちが魚を美味しく食べてもらうために大切にしている理由があります。次回もぜひ読んでください。

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